17-18シーズンプレビュー キングス編

プレビュー第1弾はリクエストいただいたヒートにしましたが、後半に向けてチームが改善した事や特徴がわかりやすかったので書きやすいチームでした。
第2弾はどこにしようか考えましたが、逆に書きにくいチームにしようと思いました。そこで選んだのはキングス。データの使いようがない若者と移籍ベテランで成り立つチームです。
不安なのはキングスに需要(ファン)があるかどうかですが、かつてキングスはリーグで最もエキサイティングなチームでした。スーパーなパッシングゲームは見る人を興奮させてくれました。
「そんな時代知らない」という方には動画検索をお勧めします。
kings2000s
今では高いスキルを駆使してプレーするインサイドプレーヤーが増えてきましたが、その先駆者的なチームがキングスです。PFクリス・ウェバーとCブラデ・ディバッツからもファンタスティックなプレーが飛び出しリーグ2番目の強豪でした。そんな当時のチームが完全に解体された2006年からキングスはプレイオフに進出出来ていません。
その時代が忘れられないからか、低迷するチームのフロントで指揮を任されているのはディバッツです。



失敗続きのチーム作りをリセット
ディバッツはチーム立て直しに奮闘し、カズンズを中心にゲイやロンドなんかも在籍して、それなりに期待値を上げては補強に失敗して下げる行為を繰り返します。
そして遂にチームに見切りをつけカズンズを放出しました。FAになれば移籍濃厚という事も関係はしていましたが、それはスケープゴートに過ぎず本質的にはチーム立て直しがメインだったはずです。



そんな状況に陥った要因は弱いチームでありながらドラフトに失敗し続けた事が挙げられます。
2011年からのドラフトで7位、5位、7位、8位、6位、8位と高順位で指名していきますが、残っているのは2015年のウィリーコーリースタインのみです。
チョイスも酷ければ育成もガマンできず、早々にトレードしては失敗してきています。これをみるとむしろカズンズに同情したくなります。
リラードを指名していたら?
クレイ・トンプソンを指名していたら?
きっと今頃はプレイオフでの勝利を目指すチームだったでしょう。
キングスはドラフトも育成も下手! ここ重要です。



期待値を高めた3ヶ月
そんなキングスの夏の動きの中に興味深いニュースがありました。四月に就任した副社長のスコット・ペリーがニックスのGMになるというニュースです。僅か3ヶ月の在籍でしたが、この間のキングスはメディアから賞賛されました。
まずチームは完全にリセットされます。現在公式サイトには18人の選手が掲載されていますが、3年以上のNBA経験がある選手は6人だけ。キングス在籍3年以上の選手は0です。完全に若手主体に切り替わりました。
ドラフトは5位と10位指名権がありました。ロッタリーを狙っていたと思われますがクジに外れました。それでもデアーロン・フォックスが獲れたのはPG豊作のドラフトならではです。
さらに秀逸だったのは10位指名権を15位と20位に変換し、ジャスティン・ジャクソンとハリー・ジャイルズを獲りました。どちらももう少し上位での指名が予想されていた選手です。この2人がどれだけ活躍するかはわかりませんが、かなりツキもあったドラフトでした。
何よりも3人のバランスがよかったです。単なる若手達の集まりではなくバランスのとれた若いチームになりました。
3年目までの主な選手と年齢
PG フォックス 19
フランク・メイソン 23
SG バディ・ヒールド 23
ボグダノビッチ 24
SF ジャクソン 22
PF ジャイルズ 19
ラビジエリ 21
C コーリースタイン 23
パパジアニス 20
ワンアンドダンばかりが集まった若手ではないため22歳以上が多いのも好材料です。ある程度計算出来ないと選手の組み合わせが難しくなるからです。ある意味未来にスターを目指す選手と即座にロールプレーヤーを目指す選手の組合せです。



正直、選手についてはあまり知りませんが、例えば2年目のヒールドはキングスに移籍してきて25試合で3PFG42.8%と素晴らしいシューターの片鱗をみせています。
フォックスはボールハンドラーとしてペネトレイトを得意とし、ジャクソンは判断力を武器に多彩さでプレーします。
それぞれが異なる特徴を持っており効果的なチームにみえてきます。フォックス+1人がスターになれるなら良いチームになるでしょう。+1人として期待されるのはインサイド陣です。
ジャイルズは元々はドラフトNO1候補でしたがケガで何も証明出来ませんでした。ケガ前の比較対象はクリス・ウェバー!! キングスとしては、ディバッツとしては15位に残っていたなら獲らないわけにいきません。



そしてまっさらな若手チームにFAでベテランが加わりました。ビンス・カーター、ランドルフ、ジョージ・ヒルの3人です。上の若手達の経験年数全部足してもカーターの19年間に勝てません。
彼らがキングスに来た理由はサラリーが高いからです。サラリーキャップが空きまくっているキングスなのでベテランに高いサラリー払う余裕があります。ヒルに年2000万ドル払うチームは他にありません。
しかも若手のサラリーが上がる頃には契約切れている念の入れようです。この3年で若手を鍛え、要不要を振り分けたらFA市場に打って出る算段です。
上手くいくかどうかは育成次第



選手はムリなのでHCから考えよう
そんなチームを率いるのはデイビッド・イェーガーHC。Dリーグで結果を残しNBAに選手を送り込み、グリズリーズのACからHCとなりました。
非常にゆっくりとしたテンポから堅実なチームオフェンスを展開します。そして堅いディフェンスが持ち味です。こちらも個人のディフェンス力以上にチームディフェンスを徹底できます。
例えばマーク・ガソルは個人のディフェンス力が優れたリムプロテクターですが、高い運動能力を活かしてどんなシュートにでもブロックに跳ぶ、そんな事は出来ません。コースを限定し選択肢を狭め苦しいシュートを打たせるタイプです。それはチームとしてもディレクションしているから可能なディフェンスです。
イェーガー時(15-16シーズン)と16-17シーズンのディフェンスレーティングを比べてみます。
グリズリーズのディフェンスレーティング
105.4 → 104.5
ガソルのディフェンスレーティング
102.9 → 105.1
つまりチームディフェンスは進化しましたが、ガソルは存在感を失いました。イェーガーは選手の特徴を活かしたディフェンスシステムを構築していました。



上手くいかなかった戦術
そんなグリズリーズ時代の功績を評価されてキングスに招かれたのは昨年です。キングスはなんとリーグ3位の平均得点がありながらプレイオフを逃したため、より堅実性がありディフェンス強化に期待出来るイェーガーを起用したわけです。
そんなイェーガーの成果をみてみますが、可哀想なのでカズンズを放出する前までで比較します。
レーティング
オフェンス 103.3(14位)→ 104.8(17位)
ディフェンス 106.3(23位)→108.6(24位)
ペース 102.2(1位)→96.7(27位)
イェーガーらしくペースを著しく落としています。リーグで最も早い展開のチームが最下層になりました。それに伴いレーティングを上げられれば問題ないのですが失敗しました。選手との関係は上手くやっていたようですが、結果だけみればチーム解体の決定打になったともいえます。
カズンズ後のハイライト映像をみるとチームディフェンスが全く出来ていません。選手達はピックに対する約束事、ヘルプの立ち位置など理解出来ていないのか全く足が動いていません。



上手くいかなかった1年目を経て、カーター、ランドルフ、クーファスの存在はグリズリーズカラーを浸透させる目的もあるはずです。遅いという事は1つひとつのプレーでシステムを徹底する面もあります。ジャズとペイサーズで過ごしたヒルにも似た面が期待されます。
同じく再建中のレイカーズのマジックがショータイムの復権を視野に入れて早い展開をロンゾに託した同じ年に、ディバッツがフォックスに遅い展開を託すのは面白い対比です。



イェーガーの泣き所
Dリーグで結果を残しただけあって若手育成に期待をかけられています。しかし管理人のイメージは真逆です。
グリズリーズ時代は苦しい台所事情でもベテラン陣を上手く活用しプレイオフに進みました。あの頃と比べればキングスには良い若手が沢山います。ベテランに頼らざる得なかった過去と違い、未来に向かってチームを作ることができます。
ところがグリズリーズを引き継いだフィッツデイルHCは若手を活用して結果を残してしまいました。危なげなくプレイオフに進出したのです。決してスターではありませんが、戦術を実行しチームに貢献させる事に成功したわけです。
そしてその成果はこのオフにカーターやランドルフと決別し若手へのシフトという形で評価されました。
イェーガー時代のグリズリーズはチームで戦い多くの選手が役割を果たしましたが、若手をロールプレーヤーにさえ育てることは出来ませんでした。素材不足と思われていましたが、それをあっさりと覆されたわけです。
キングスはイェーガーHCへの高い期待から支える体制は構築したものの、その育成手腕には疑問が残ります。



そんなわけでキングスの最大の懸念事項は「育成が下手なチーム」×「育成が下手なHC」×「大胆な若手チーム」という図式です。
どんなスターターで臨むかは不明ですが、イェーガーはローテーションで選手を使うので、多くの選手にチャンスが与えられます。その点では若手を使わざるを得ない以上、上手く育成出来るかもしれません。
誰が伸びるかわからない部分と育成に時間をかけられる余裕から、プレータイムが配分される事はポジティブです。



フォックスの新人王の可能性
十分なプレータイムが与えられ、チームも弱いので成績へのハードルも低くなります。上位指名ではテイタムとジョシュ・ジャクソンはプレータイムが怪しく、フルツはチーム内にライバルがいます。
ロンゾと並び有利なスタート位置につけています。その点は他の選手も同じです。キングスからの新人王の誕生にも期待が持てます。



まとめ
◆ストロングポイント◆
なし。白紙だから。
◆ポジティブポイント◆
バランスよく揃えた若手有望株
ローテーションシステムによるプレータイムの確保
HCの意図を表現するベテランの獲得
◆ネガティヴポイント◆
育成実績の乏しいチームとHC
強豪が揃いすぎたウエストに所属し勝てない
20勝出来れば成功、30勝出来れば大成功
カズンズ後も3割勝てたので20勝は超える計算ですが、目標は勝つことよりも育てることです。あと来年こそ3位以内の指名権欲しい。これだけプレイオフに出れてなくて、世代トップ選手を指名出来ないチームも珍しい。
そんなんわけでキングスがプレイオフに出る確率は、ウォーリアーズがプレイオフに出れない確率くらいだと思います。



プレビュー第2弾はキングスになりました。合わせてリクエストいただいた「HCの評価」と「過去の印象深いチーム」を盛り込んでみました。データで書きにくいためHCに触れるしかありませんでした。
キングスを検索すると未だに2000年チームがトップに出てきて驚きました。
それにしても、うーん、キングスにはどれだけ需要があったのだろうか?


##
##

17-18シーズンプレビュー キングス編” への2件のフィードバック

  1. いつも楽しく拝見しています。
    データ分析による解説や展望論にはとても説得力があり、更新が毎回楽しみです。
    さて、現在シーズンプレビューを投稿されていますが、私からは2チームのリクエストがあります。
    それはロケッツとクリッパーズです。
    私はクリス・ポールのファンなので、今回の移籍に絡んだ上記チームの展望を書いていただきたいです。
    可能であれば、よろしくお願いします。
    今後もご無理なさらず、更新されることを楽しみにしています。

  2. 2000年初頭のキングスは本当に魅力のあるチームでしたね。
    2002年のウエストファイナル(対レイカーズ)、個人的には
    プレーオフで一番の好シリーズだと思っております。
    ダグ・クリスティのハードなディフェンスと、
    シュート決めた後に人差し指を天に向けるパフォーマンスが大好きでした。
    シーズンプレビュー、楽しみにしております。
    可能であれば、オフで一番動きがあったウルブスをお願いしたいです。

ord0325 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA