17-18シーズンプレビュー ヒート編

特にニュースもないし何書こうか考えていたところ、ヒートのプレビューの話をいただきました。プレビューってまだ早いかな、と思っていましたが、よく考えたら30チームあるので2日に1チーム書いても2ヶ月かかります。まぁ全チーム書くことはないでしょうが。
そんかわけで第1弾はヒートです。アーヴィングとのトレード成立しない前提です。



最大のストロングポイント

管理人はヒートが嫌いです。その理由は仲良しこよしでビック3なんて結成してリーグをつまらなくしたからです。アレ以降、いろいろな場面でその影響が出ています。ウィザーズのオーナーは初めてラグジュアリータックスを払う事になった件について、ラグジュアリータックスはレブロンGMが原因と言ったそうです。戦力集中とサラリーキャップを大きく超えたチーム設計はアンバランスなリーグを加速させました。

つまりはプレーでなく姿勢としてレブロンが嫌いで、故にヒートも嫌いでした。でも、それって今の選手にもチームにも関係ありません。そしてビック3全員が去ったヒートは開幕後の低迷から立て直し、終盤戦のスパートで一気に注目チームとなりました。スター不在の中行われるチームプレーは素晴らしいものでした。



ヒート最大のストロングポイントはスポルストラHCとなりました。ビック3が去った事で評価を上げたわけです。戦力が強大で勝っていただけ、という評価を覆しました。ちなみに社長のパット・ライリーもかつて同じ事をしています。

スターがいなくなった事で、チームとしての機能性を高めるというのは、よくある話である反面、それだけの人材を集める方向に切り替える事が難しく、勝利に結びつかない事が多いです。
その点ではライリーとスポルストラのコンビは機能しているといえます。見事に層の厚いチームを作りました。

ちなみにこのオフにペイサーズが同じ取組をしています。



アウトサイドの改善で勝利を呼び込む

ドラジッチの20点を筆頭に、平均二桁得点が8人並びます。(ウィンスローは18試合のみ)全員が残留見込です。
しかし、8人中5人がガード登録の選手という奇妙な構成です。3P全盛期のNBAにおいてはそこまで外のシュート数が多いわけではないのですが、チームの勝利との関係性は高いものがありました。

12月までの成績
10勝24敗
平均98.4点
3P 8.5/25本 34%

1月以降の成績
31勝14敗
平均106.5点
3P 10.8/28.4本 38.1%

得点が8点増えており、3Pは2.3本増えたので7点増えた事になります。二桁得点の8人中6人が平均3本以上の3Pを打っています。
つまり全方位アウトサイドシュートスタイルの確立が生み出した得点力アップでした。

41勝41敗でしたが、勝った試合の3Pは41%、負けた試合は31.7%と10%の差があります。シューターを揃えたチームではないので、安定感に欠けるのは否めないでしょう。



リーグで38.1%以上の確率で3Pを決めたのはスパーズ、キャブス、ウォーリアーズの3チームだけです。この確率をシーズン通してキープ出来るかが、キーポイントになりそうです。

夏の補強でセルティックスからオリニクを獲得しました。オリニクの能力については賛否でそうですが、アウトサイドシュートには定評があります。
ストレッチ系のインサイドを得た事でさらなる3Pの増加、チームオフェンスを崩さずにビックマンを使える利点があるため、ヒートにとっては有用な存在です。



チームを支えるホワイトサイド

これだけガード陣に頼りながらも戦えるのはリーグ屈指のリムプロテクターであるホワイトサイドの存在です。
14.1リバウンド(1位)
2.1ブロック(4位)

苦労人のホワイトサイドですが、今やチームで最も重要なピースです。

しかしオリニクはホワイトサイドと共存は出来ても代役にはなり得ません。その代わり遡ってドラフトではアデバヨを指名しました。
この選手はややアンダーサイズながら、筋骨隆々でパワーとスピードを兼ね備えているハワードタイプです。ポストからの得点も出来ますが、アウトサイドはダメな点も変に色気出さなくて良いでしょう。

ガード主体のオフェンスでは高さ以上に動ける事が重要なため、チームにマッチしそうです。



そんなわけでスター不在ですが全員アタックの選手を集め結果を残し、更にこの夏に的確な補強が出来ました。イーストのプレイオフチームはラプターズ、ホークス、ブルズ、ペイサーズと4チームが戦力を明らかに落としており、ヒートのプレイオフは目標ではなくノルマになったと言えます。
バックス、ウィザーズと並びエリートチームへのステップアップレースに参加する事が求められます。



ドライビングオフェンス

3Pを効率的に決める事が出来るようになり勝率をあげたわけですが、そんなガード中心のオフェンスをもう少し詳しくみていきます。

ドライブ数 35.1回 (2位)
パス数 292.1本(22位)
アシスト数 21.2本(22位)

ガードが多く3Pが特徴と述べましたが、パッシングで躱すわけではなく、アシストも少ないチームです。パスではなくヒートはドライブ中心で攻め立てます。その点ではウォーリアーズよりキャブス寄りです。



アイソレーション割合 6.9% (17位)
オフェンス移動速度 4.54マイル(14位)

しかし、キャブスのようにアイソレーション万歳ではありません。それが出来るスターがいないという事もあります。そしてキャブスに比べれば遥かに動きます。アウトサイドに広がってコートを広く使うのではなく、オフボールで動く事でスペースを作ります。
ハンドオフ(6位)やピック(8位)を使ってボールと人を動かし、ギャップを作ってドライブしていくのがヒートのスタイルです。

3Pが決まるようになって勝てるようになったのは、戦術が浸透しドライブからのキックアウトが増えた事、キャッチ&シュートを選択する回数が増えた事でよりドライブが効果的になったと考えられます。

つまりキャブスと違い戦術的に機能させています。接戦の終盤でも誰がドライブしてくるかわからない形は個人の成長も促しました。



特徴的なのはピック&ロールからボールマンのシュートは多い(8位)けど、スクリナーのシュートは少ない(28位)傾向にあるところです。
ヒートはアウトサイドの人数を増やしインサイドにドライブするスペースを構築しながら、人が動いてギャップを作るシステムで戦いました。単純にホワイトサイドが合わせるのがイマイチ上手くない事もあります。

新戦力のオリニクはセルティックスでもアウトサイドでのスクリナー&ポップシューターでした。これまで少なかったスクリナーの得点を増やしながらも、インサイドのスペースは確保出来ます。役割を大きく変えずにプレーできて、かつチームの得点パターンを増やせるので期待値は高いです。



オフェンス面での欠点

戦術的に整備されたオフェンスで、オフボールで積極的に動いてギャップを作り、ギャップにドライブが出来て、キックアウトで3Pが決まる。
そんなオフェンスは完璧のようですが、ヒートには弱点があります。それは2Pシュートの確率が高くない事。低いというよりは高くないです。

2PFG% 49.7%(19位)
10フィート以内 55.6%(19位)

スペースのあるインサイドへのドライブだし、ホワイトサイドもいるので確実に決めたいところですが、やや苦手な傾向にあります。ドライブのFG%は47.2%で15位です。

しかし、これをどうするかは難しい問題です。個人のスキルアップに求めるしかありませんが、タレント不在の全員アタックだからこそ可能なドライビングオフェンスでもあります。確率に課題が残る事はある程度諦めるべきなのかもしれません。
本来はこのような点をトレードやFAで選手をアップグレードしていくのですが、ヘイワードの獲得に失敗し、また自チームにFAが多かったことから再契約優先でした。

アップグレードは出来なかったものの、戦力キープは出来たので、あとは試合をこなしていく中で戦術の熟成度を高め、状況判断の質を上げるのみです。



ディフェンス

オフェンスを中心にみてきましたが、ヒートはディフェンスのチームです。硬いディフェンスにオフェンス力が伴ってきた事で勝てるようになっただけです。

ディフェンス
平均失点 102.1点(5位)
レーティング 104.1 (5位)

なお、イースト相手とウエスト相手ではレーティングで2点くらい違います。正直、イーストのチームにオフェンス力がない事は頭の片隅に入れておいてください。



被3P数 22.7本(1位)
被3PFG 34.3%(3位)
3P DIFF% ー1.4%(3位)

そのディフェンスの特徴は3Pを抑えている点にあります。リーグで最も3Pを打たせず、確率も抑えています。
最後のDIFFは相手の平均FG%に対して、ヒートとの対戦時に何%変化したかの数値です。つまりヒート相手だと通常よりも1.4%シュートが落ちる事になります。

そうやってアウトサイドにプレッシャーをかけ、リング周辺にはホワイトサイドが待ち構えます。前に出てきたディフェンスを抜いてもホワイトサイドのブロックが待ち構えているのは、オフェンスにとって脅威のはずです。



ちなみに意外にもホワイトサイドがいない時間の方がディフェンスレーティングが良くなります。

オンコート 105.3点
オフコート 102.2点

ホワイトサイドの実力に疑いはないものの、より広範囲にカバーできるタイプの方がフィットしているのかもしれません。
これは同じく3Pを落とさせるのを得意とするウォーリアーズがグリーンを重宝しているのと似ています。アデバヨはルーキーではありますが、広範囲をカバーする点でも期待されているでしょう。



課題はファストブレイク

3Pを落とさせるのが得意
リバウンドの強い選手がいる
ガードが多く、オフボールでも走る

これだけの条件を揃えると速攻での得点が多くなるものですが、ヒートは何故か速攻を苦手にしています。

速攻での得点 11.1点(23位)

ウォーリアーズやロケッツは3Pを打たせて、ロングリバウンドからカウンターをします。共にワイドに開いて速攻を決めるチームです。
38%の3P%ならば速攻でも積極的に打つべきです。ヒートはシステムを整備すれば増やせるはずです。

前述の2PFGの悪さも速攻が増えると改善されます。システム的な改善ではありませんが、イージーな得点を増やす事は試合展開を楽にしてくれるはずです。



まとめ

目標は50勝!
プレイオフではなくエリートチーム!!

◆ストロングポイント◆
戦術的なドライビングオフェンス
高確率の3Pシュート
堅固なアウトサイドディフェンス
厚い選手層

◆オフのポジティブポイント◆
成功を収めた戦力の維持に成功
オリニク獲得によるオフェンスパターンの増加
アデバヨによる選手層の強化

◆オフのネガティヴポイント◆
選手のアップグレードに失敗
弱点への対策に未着手

オフの評価 +30点
そんなわけで、マイナスは少なく、その分プラスも少ないものの、確実な補強となりました。後半戦の快進撃を信頼しての夏でした。



メンバーも残せたので1月以降のペースで勝てるならば50勝は現実としてみえてきます。しかし、それをシーズン通して出来るかは別の問題でもあります。

安定したディフェンスはあるもののシュートの好不調はどんなチームにも起こるものです。そんな時に違う方法で得点しリズムを掴むのが必要ですが、強引にドライブで得点出来るか、そこに課題はあります。
ディフェンスの良さを活かして速攻を増やすのも有効な手段です。オリニクの件も含めて、シーズンが始まってから得点パターンが増えているかに注目したいと思います。

予想としてはある程度勝てるものの、誰かしらの何かしらの暴走やケガも出てきて50勝には届かない。でもプレイオフには出れるでしょう。なんせイーストでプレイオフ出場へ不安材料がないのはキャブス、セルティックス、バックスの3チームしかないので。

そしてこのバスケでプレイオフに勝てるかは違う問題なので、やってみないとわかりません。



余談。カイリー・アーヴィングのトレード

本人が希望している事もありますが、ヒートとしてもメリットのあるトレードです。それはつまり夏に実現出来なかった選手のアップグレードにあたります。
上記の通り、ドライビングオフェンスが中心であり、その決定力に課題があるならば、まさにアーヴィングはベストマッチの人材です。

以前の記事で触れたようにレブロン以前のアーヴィングはよく動く選手で、4.5マイルで動き続けるヒートは自身のペースに合うはずです。動くけどパッシングチームではない事もパス能力に疑問のあるアーヴィングの欠点を隠してくれます。

デメリットとしてはドラジッチほど視野が広くなくて、ギャップを利用するイマジネーションに欠けています。とはいえ、ドラジッチもアシスト数自体はあまり多くない選手なので、フィニッシャーとして有能なアーヴィングの方が困った時に頼りになります。

ゲームメイク能力に疑問はあっても、これだけシステム化出来ているなら問題ないとHCは考えるでしょう。



かなり早いけどレビュー第1弾はヒートとなりました。チームの骨格が変わらないのでデータを追いやすい面もありました。

昨年の公式サイトのレビューをみると、殆ど中身のない記事になっています。それは選手が入れ替わり、特にウェイドが移籍したのでチームがどうなるか読めなかったからでしょう。
http://www.nba.co.jp/nba/2016-17-team-analysis-heat/1geszj35t41xy1ez6gv7c5h52u

書いてみるとヒートの期待値が高い事、オリニクを獲得した意味がみえてきます。どんな試合をするのか楽しみになります。自分で選ぶならヒートはチョイスしなかったので、要望いただきありがとうございました。

あっアーヴィングはヒートには加入しないと思います。

17-18シーズンプレビュー ヒート編” への3件のフィードバック

  1. いつもデータに裏付けされた解説で非常に興味深く見させて頂いています。
    全チームプレビューするのは非常に大変かと思いますが、他チームの見解も是非聞いてみたいので、これからも更新を楽しみにしています。(無理はしないでくださいね)

  2. いつも楽しんで読ませて頂いてます(^^)。
    過去の印象に残っているチームや選手の事を書いてもらえたら嬉しいです。
    レイカーズのファンなのでレイカーズのプレビューも楽しみにしてます(⌒▽⌒)

  3. ちょっと調べてみたらドラジッチは3.4点でリーグ20位なのでまずまずですが、次に来るのがウェイターズの2.1点でリーグ62位です。
    30チームですから上位2人でこのランクではチームは厳しいですね。

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