カンファレンスファイナルが盛り上がっていますが、遅くなってしまったジャズです。
遅くなった理由は単に他に書き物をする用事があったからです。そして書きたいことが多いけど、まとめると凄く少ないのがジャズ
◉強すぎるジャズ
終わってみれば昨シーズンと同じセカンドラウンドでの敗退ですが、内容は段違いでした。ヘイワードとヒルという2人のスターターがいなくなり、ジョー・ジョンソン、フッドも放出し昨シーズンのプレータイム上位7人の内4人がいなくなったにも関わらず、チームとしてのクオリティは下がるどころか上がったのでした。
しかもチームは開幕から苦しい状況が続いていきました。1月22日までは19勝28敗です。その時点ではブルズやネッツよりも1勝多いだけでした。たったの1勝です。なんならタンクしてドラフト上位指名権を狙っても許されるような成績でした。
そこからチームは29勝6敗。勝率8割3分はロケッツに次ぐリーグ2位です。
あまりにも強かった後半戦のジャズ。感動すら覚えるシーズンでした。
その強さの秘密は過去記事を参照して下さい。
特に前者の連勝当時は「3Pが決まりすぎて勝っている」なんて風評もありましたが「そんなわけないよ」と書いた内容だったのでした。今では誰も否定しないであろうジャズの強さですが、それでも「スターがいない」なんて揶揄されてもいます。とびっきりのスターがいるじゃないか!!
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◉3人のキープレイヤー
今季のジャズを語る上で3人のキープレイヤーがいます。
ドノバン・ミッチェル
ロイス・オニール
ジョー・クラウダー
これはジャズの中で重要なプレイヤーというわけではなく、ジャズというチームを表す意味合いでのキープレイヤーです。
まずドノバン・ミッチェル。ジャズにスターがいないなんて大嘘です。むしろ「マイケル・ジョーダンしかいないチーム」って言われても良いくらいの存在。それくらい特別な存在感を放っているのがドノバン・ミッチェル。
ルーキーを過小評価する風潮があるのですが、プレーオフでの内容はリーグの中で一握りしかいない特別な選手である事を示しました。オールスターの上を行く存在です。
・自分にマークが集中しても決める
・状況を見て冷静にパスを回す
・プレーオフでステップアップする
まぁ集約すれば最後ですが、各チームが様々な対策を施す中で、それを個人の力で突破出来るのはプレーオフではかなり少数になります。それもほぼ毎試合こなしてしまう。特にジャズの場合は突破力のある選手がミッチェルだけのため、最大限の警戒をされます。逆にそれを利用してエクサムとバークスが活躍したロケッツ戦でもありました。
ジャズがチームとしての戦略に優れているとはいえ、それでもポール・ジョージを相手にあれだけのプレーが出来る選手はリーグの中で誰がいるのか。ひょっとすると誰もいないかもしれません。ポール・ジョージよりディフェンスの良いらしいコビントンなら止めるのかな(遠い目)
ドノバン・ミッチェルについては、いずれ別に書くとして、重要なのはエースとしてチーム全体を考えながらプレー出来ている点です。SG、PG両方のポジションでプレーし、局面が重要になるほど自分自身が得点する最良のパターンを選択しています。ジャズ自体がオフェンスパターンを変えていく中で、ディフェンスの状況から適切なチョイスをすることは簡単ではないはず。
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次に選んだのがロイス・オニール。ドラフト外から成り上がったウイングはハードなディフェンスを持ち味にセカンドラウンドではルビオの代役としてスターターになりました。
3人目がトレードで獲得したジョー・クラウダー。こちらもハードなディフェンスのウイングです。
つまりジャズが必要としていたのは「ディフェンスの良いウイング」というなんてことはないシンプルな答えです。このタイプを求めるのは上位チームの多くがやっていることです。
ここでちょっとクラウダーの成績を比較してみます。キャブス時代は酷評されたクラウダーはジャズにきて明るく元気に楽しそうにプレーをしていました。
〇クラウダーの成績変化 キャブス→ジャズ
FG 41.8%→38.6%
3P 32.8%→31.6%
リバウンド 3.3→3.8
スティール 0.8→0.9
つまりジャズで輝いていたクラウダーですが、その個人能力はキャブス時代と殆ど変化していません。戦術にあったから数字を伸ばしたわけではなく、チームの考え方と合うかどうかだけです。ちなみに違いとしては3Pアテンプトが2本増えた事です。積極的に打てるチームだったジャズ。
ドノバン・ミッチェルもオニールも積極的に打っていきます。チームオフェンス徹底だけど、実は個人が積極的でOKなチームでもあります。
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戦術遂行能力のあるエースとウイング
この2つを手に入れたジャズ。
しかし、今回は別に戦力分析とかではなくて振り返りなので、細かいことは置いておきます。重要なのは3人が揃ってハードワーカーだったことです。プレーオフのジャズは素晴らしいハードワークをみせていきました。それはシーズンの印象とは少し違ったので驚きましたし、走りまくるゴベールには古いタイプとか言って申し訳なかった思いでいっぱいです。
つまりジャズはリーグNo1ともいえる緻密な戦略と個人の積極性とハードワークのチームでした。緻密な戦略に目が行くのだけど、実際には後者2つをスナイダーHCが高く評価しているわけです。それはまた「個人能力が低いけど・・・」なんて嘘だと言うことです。ハードワーク出来ないスターなんてプレーオフでは役立たずなのさ。
こんなブログ書いているけど、ウエストブルックからTJマッコネルまでハードワーカーが好きな管理人なので、クイン・スナイダーが今シーズン評価していた事項は主義志向にピッタリはまるのでした。超絶技巧よりも緻密な戦略、オフェンス力よりもディフェンス力、シューターよりもハードワーカー!
ヘイワード、ヒル、ジョー・ジョンソン、フッドでは見え難かった部分が見えてきた3人のキーマンなのでした。
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◉スナイダーは未来を生むのか
これも別記事でテーマ作って書くべきかもしれませんが、今シーズン存在感を示したHCはブラッド・スティーブンスですが、クイン・スナイダーは一枚上をいく存在です。東西のライバルとして成り立って欲しいスティーブンスvsスナイダーのHC対決。
試合中に変化する力関係の観察力とモチベーターとして優れいてるのがスティーブンスならば、自分達の良さを最大限に活かしながら相手に対応する戦略力の高さがスナイダーです。
過去記事に書いたようにジャズが素晴らしいというか、新しいと感じさせてくれたのは「オフェンスストーリーがあること」です。試合終盤にミッチェルが突破するセットに繋げるまでに、選手交代をしながら自分達のオフェンスを変化させています。これが非常に論理的な順番で成り立っています。
論理的ストーリーオフェンス
でもこれってストーリーを作っているから「自分達の強さ」を追い求めているような感じです。ところがそれは「ディフェンスへの対応が同居するオフェンス」でもあるのです。だからこそ非常に良く出来ているジャズのオフェンスシステムです。
それはロケッツですら苦労したのだから恐ろしい。その上ロケッツ戦ではエクサムとバークスのスピードというサンダー戦ではなかった特徴を組み込んでしまいました。アイソレーションでやるならともかく、普通にジャズオフェンスしているのに、スピード作戦を組み込んでくるのだから、もはや意味不明です。どうやったらそこまで完璧に組み込めるのか。
自分達の強さを活かすシステム
相手の弱点を突くシステム
この両者を融合させているスナイダーのシステムは驚嘆してしまいます。ロケッツも同居パターンだけどやることを絞っているし、セルティックスは後者を追求しているのでまだ理解出来るのですが、複数のパターンを使い分けながら両者を共存させているジャズってどうなっているのか。
その代償として割と選手が逃げていくけどね。カンターやらライルズやら、残っているエクサムとバークスも含めて練習量と判断力がついてこれないとジャズでは活躍できません。誰もが活躍するセルティックスにはそこが劣る部分です。
誰かクラウダーにインタビューして欲しい。そしてココスコフがサンズで何をするかも注目です。ACとケンカするクリスとかさ・・・。
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そんなわけで素晴らしいジャズのオフェンスですが、ディフェンス面でもゴベールなんてアウトサイドが守れないビックマンを抱えているのに、見事に機能させてしまうのだから素晴らしいです。まぁサンダーはアウトサイドが弱いのでまだしも、ロケッツ相手でも機能させたのだから驚嘆です。
しかし、シーズン前半は酷かったし、連勝後でもここまで見事に守れてはいませんでした。つまり、シーズン通してシステムとしても成長させているのもスナイダーの素晴らしさです。
サンダーとのファーストラウンドではサンダー側のゲームプランがブレブレなのを批判しましたが、その一方でジャズはとにかくぶれない。ルビオに打たされる形になっても、決してぶれないし、決まらなくても続けます。それを支えるハードワークでもあったので、戦力で劣っていても戦略では3歩くらい前を歩いていました。
ロケッツとのシリーズでも点差が離れてもぶれないジャズに、毎試合最後まで苦労させられたロケッツでした。3Pが決まって15点リードになっても、変わらずジリジリと追いかけてくるから、自分達が外すと10点差、5点差となっていく恐怖があります。
システムは柔軟性があるのに、頑ななまでにゲームプランを崩さないし、それは負けが込んでいても変えずにチームビルディングしていったシーズンが表していました。逆に言えば「自分達は正しい」という絶対的な自信に満ちあふれているようなクイン・スナイダー。
感動的なジャズのシーズンは、ドノバン・ミッチェルの恐ろしさと、クイン・スナイダーの有能さを引き立たせてくれました。
ハードワーク出来るウイングという現代的な選手をベンチに加えながらも、1人のスーパーエースと少し時代遅れのリムプロテクター、そしてパッシングPGと運動能力の低いシューター、無骨なPFという古い選手構成で全く新しい価値観を生み出してくれているクイン・スナイダーです。
スティーブ・カー曰くロケッツとのシリーズは「サイズのあるウイングを揃えオールラウンドな5人で戦う新時代のバスケ」ということでした。それは間違いなく正しい。
しかし、より個性的なメンバーを現代的にアレンジしているのがジャズでもあります。だからこそ新時代ではなく未来を生み出してくれる期待をしたくなるのでした。
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◉来季も期待しよう
そんなわけでべた褒めのジャズ。プレーオフに出たチームの中では2番目にサラリーが安いチームなので、フェイバーズとエクサムと再契約することも問題なく出来るはずです。もしくはもう1人スターを探すことだって出来ます。
「スモールマーケットだから」なんて言うけど、1番安いペイサーズ同様にとりたい選手像が固まってきている印象だし、そもそも「ニューヨークに行きたい!」なんてタイプの選手はスナイダーについて来れないでしょうし。渡邊雄太もありだと思うけど。
スーパーエースが安い間に優勝できる陣容を整えて欲しいです。意外とフルツ君なんかフィットしそうだけどトレード要員はいないよね。ポール・ジョージとかジャズならキャリアハイの成績出しそうだけど、普通は負けたチームに移籍はしないよね。普通は。
最低限、現状のメンバーが残るならば今シーズンの後半戦レベルとはいわないまでも50勝を狙える位置にいます。ペリカンズなんかもライバルになるので、より熾烈な争いでしょうが、優勝を狙えるHCとエースである事を示して欲しい来シーズンです。
スナイダーHCは点差のついた終盤でもかなり主力を引っ張るイメージで、特定の選手しか信用してないのかと思っていたので、ロケッツ戦でいきなりバークスなんかを重用したのには驚きました。もうちょっとシーズン中から使う選手増やしてくれたらスターター(特にミッチェル)の負担も減るのに・・・(ネトの怪我はあったけど・・・)
今年のジャズはルビオ、ミッチェル、イングルスの連動性が子気味良くて見ていて楽しいチームでした。来年も楽しみです^^)
プレーオフはともかくレギュラーシーズンでミッチェルほかのプレータイムを抑えないとケガ人が増えてきそうですよね。
バークスは25分くらいプレーさせても良い選手なので、どれだけ信用を得られるのか。
もう1段階上がるためにはベンチメンバーの強化を進めて欲しいです。
ジャズには期待しているのですが、どうにも不安な面があって、ケガのリスクとどう向き合っていくのかが問題だと思っています。
今シーズンも散々悩まされましたが、練習量とハードワークを徹底させるのならきっとそのリスクはついて回りそうなんですよねぇ…
まぁ、ミッチェルさえ健康ならなんとかなりそうな気もしますが、というかそう思わせてくれるミッチェルはほんとに凄いルーキーですねw
まさか「足がつるのは練習が足りないから」なんて言わないでしょうが、ゴベールの弱さや1回ケガすると続いてしまう点とかスナイダーの起用法だけでなく課題がありますよね。
だからこそミッチェルの健康を保つために最大限の注意を払って欲しいです。