プレーオフ前に予想するならロケッツの4勝1敗でした。「でした」なのです。
ウォーリアーズ対策を練って構成されたチームだけあってロケッツが作り上げたチームは強力でした。プレーオフでも順調にウルブスとジャズを下して勝ち上がりました。両チームが8勝2敗とまさに互角であり良い状態で臨む最高のカンファレンスファイナルになることが期待されています。
しかし、ここまでの内容は対照的でした。それは対戦相手がもたらした差異でしかありませんが、そんな巡り合わせも重要になるくらいの細かい差が大きく跳ね返ってくるシリーズになると予想しています。
「毎試合お互いにチェスのような戦いになる」
そういったのはカペラ。カペラがこの発言をすることに大きな意味があります。3Pの爆発力で勝っているようなチームと思われがちですが、ディフェンスの立ち位置とアクションによって細かく自分達を調整してくるのがロケッツです。カペラであっても自分達を知っています。
そして初めてイグダラをスターターに入れたハンプトン5を起用したウォーリアーズ。様々な違いがあれどイグダラが違うのはそんな細かな対応をしっかりとコートで表現する面にもあります。マギーには無理。
そんなチェスのような戦いであれば、不利になりそうなのがロケッツです。
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◉ジャズとペリカンズ
どちらもそれなりに相手を苦しめましたが、苦しめ方の違いが大きかったです。
試合の中でウォーリアーズを上回る部分をみせることで上下動の激しかったペリカンズ
ロケッツの弱みを見つけて晒していくことで常に接戦を繰り広げたジャズ
ウォーリアーズはオフェンス合戦ではペリカンズに負ける可能性を感じ取り、ディフェンス面を強く意識することでラッシュを生み出しました。そこにはハンプトン5だけでなくルーニーによるリムプロテクトを使ったり、逆にマギーやヤングの出番を減らしたり。
ある意味、苦しい場面が出てきたからこそ原点回帰して攻守の連動性を取り戻していったウォーリアーズ。それは怪しい部分を垣間見せながらも、自分達の良さを取り戻していく闘いでもありました。簡単に言えば「自分達が強みを出さないとペリカンズには勝てない」という状態でした。
起用される選手、されない選手が区分けされていき、弱い部分を隠していったようなイメージでもあります。ロケッツにとっては良い話ではありません。
対するジャズはロケッツの思わぬ弱点を晒してきました。例えばディフェンスの連動性を逆手にとってトランジションの中で片サイドに寄せてきたり、単なるスピード勝負でタッカーを集中的に狙ったり。予想以上に効果的でした。
そして予想できていた内容も証明してみせました。ひたすらクリス・ポールに個人勝負させていくことでオフェンス効率を落とさせました。第5戦に3P8/10と決められたのを除けば、他の選手へのキックアウト3Pを許さず、ひたすら個人勝負する方が勝てる確率は高くなりました。
ゴベールのリムプロテクト方法も含めてウォーリアーズには参考になる部分が多かったはずです。どちらが苦労したかではなく、より様々なものを晒されたのはロケッツでした。チェスのような戦いになるのであれば、より情報を与えてくれたジャズでした。
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◉ウォーリアーズの負けパターン
ウォーリアーズは予想通りグリーンの暴走で負けました。
3Q逆転パターンよりもハンプトン5でスタートダッシュしたのは、そんな間違いを犯さないためにスタートから締めていくことを狙っていた気がします。しかし、ロケッツがそんな簡単に走らせてくれるとは思えません。スターターをどうしてくるかは別にして、より慎重に試合に入らなければならないといえます。
一方で大差がついたペリカンズとの第5戦では4Qに再びグリーンがやらかし始めました。このときはグリーンだけではなかったので責めるのも可哀想ですが、いずれにしても暴走することは常に頭の中に入れておかなければならず、7試合あれば自滅パターンが2試合くらいは出てくるはずです。
自滅してくるウォーリアーズに対しロケッツが仕留められるかどうか。
遂にハンプトン5をスターターにしているウォーリアーズ。その狙いはスタートダッシュにあるのか。
ロケッツとの第1戦でカリー、トンプソン、デュラント、グリーンともう1人のスターターは誰になるのか?
— whynot! (@whynot_jp) May 11, 2018
代わりにデュラントの集中力は凄まじいものがあります。シンプルなプレーに徹し、ワイドの選手を使っていくデュラントは驚異的です。昨シーズンは「デュラント出しておけば大丈夫」という空気があったのですが、第4戦からのデュラントはまさにそんな感じ。
プレーメイクに間違いはないし、チームが困りそうになれば個人でタフショットを沈めてくれます。
つまり自滅パターンは発生しそうなのですが、そんな時でもデュラントが何とかしてしまう空気があります。空気というと曖昧ですが、正しいプレーメイクをすることでチームの問題点は修正されていくし、決めてくれるからボールも集まります。
カリーが復帰してどうなるかと思ったら、全く違う部分で修正できてしまったウォーリアーズ。プレーオフ前は不安要素としていたはずのデュラントが、ここにきて1番の強みになってきました。普段ならそう簡単に意見を変えないのですが、変えざるを得ないレベルの集中力です。
まぁそんな集中力が続くなら苦労しないのですが。
素晴らしいディフェンダーが並ぶロケッツですが、このデュラントは止められません。チームとしてディフェンスへの高い意識がある現状では大崩れすることもないでしょう。デュラントがシリーズを通して同じ雰囲気ならウォーリアーズが勝ちます。
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ジャズがロケッツを晒したと言ってもウォーリアーズにゴベールはいないし、エクサムやバークスのスピードもありません。同じ事を出来るわけではないので、ジャズが示した中で最も効果的なのはクリス・ポールとの個人勝負くらいです。それだって3P8本決められたらジ・エンドです。
ジャズが示してくれたことは多くありましたが、観ている方からすると理解しやすい部分は出てこない気がします。一方でもっと細かい部分として特定のオフェンスエントリーでのディフェンスの対応方法や、ハーデンへのチェック方法などを参考にしてくるはずです。
まぁぶっちゃけ観ていてもよくわからないけど活かしてくるよ、という感じです。
なので注目するのは地味なイグダラが何をしてくるのかと言うことです。特にディフェンス面でスティールを連発したり、ローテーションからヘルプで3Pにチェックしまくるシーンが多発する可能性があります。そんなわけでカペラの事を考えるよりも、敢えてパスは出させてのイグダラのスーパーディフェンスというのも見物です。
ペリカンズの強力オフェンスへの驚異からディフェンスの意識が高まっているウォーリアーズ
ジャズがみせていた対策を自分達のもつ能力の中に落とし込み、ロケッツへの有効な方法論を探してくるはずです。とはいえロケッツもドライブ後のスローダウンやカットでの合わせなど、ジャズに対して細かい修正を施してきました。
対策と修正のチェスゲーム
これに慣れているのは実はロケッツの方です。オフェンスパターンが少ないが故にシーズンを通して熟成させてきました。パターンを変えるウォーリアーズと同じパターンで修正するロケッツというチェスゲームです。
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◉ダントーニはダントーニ
ジャズへの対応としてロケッツが行った修正は効果的でした。オフェンスの天才ダントーニがもたらす試合毎の修正は秀逸でした。完璧とも言えた修正でスナイダーが繰り返してくる対策を打ち破っていきました。何を修正していたのか理解出来ないようなことも含めて、ドノバン・ミッチェル以外は何とかしていったのでした。
ひとつのプレーを細かい修正を施して通用させているわけですが、それは見方を変えれば修正できるようなチームにしてきたということです。プレーオフになって始めたわけではなく、シーズンを通して様々なディフェンスに対応させていったダントーニの能力はみえにくいけど偉大です。ピック&ロールだけで全てを解決するなんて他の誰に出来るというのか?ストックトン呼んでこい!
ダントーニはダントーニ。素晴らしきオフェンス能力です。そして悪い部分もやっぱりダントーニはダントーニでした。
プレーオフになってスターターへの傾倒が深まりました。ベンチに用意した多様なウイングを使うよりも、安心できる選手を長く起用する方向性が顕著になりました。
思えば開幕戦もほぼ7人で戦ったダントーニ
相手がウォーリアーズなのでその傾向は更に強まる可能性があります。そこがパターンが少なすぎる問題を引き起こします。それでもグリーンは起用していきましたが、ジョー・ジョンソンとライアン・アンダーソンを有効活用する手法は手に入れられませんでした。
プレーオフ前の注目点としてロケッツがオフェンスに振り切るパターンを久しぶりに観たかったのですが、ケガ明けでもあったライアン・アンダーソンをセンターにするオフェンシブユニットで打ち勝つことはありませんでした。いなくても十分に戦える証明である反面、どうしても同じパターンに陥ると7戦シリーズでは悪い部分が出てくるものです。
パターンは少ないけど超強力かつ細かい修正をしてくるダントーニ。それを完膚なきまでに止める事はほぼ不可能ですが、ウォーリアーズがどんな対応策で守ってくるのか。ぶつかり方によってはトラブルになる可能性はロケッツの方が秘めています。
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そしてパターンが少なくても問題なかった理由の1つがハーデンの存在です。相手が追い上げようとする時間帯に散々時間を消費してからステップバック3Pを決めることで逆にリードを広げてきたのが今シーズンのハーデンです。だからこそMVPであり理不尽と称したスタップバックです。
しかし、プレーオフに入ってから調子が崩れ始めます。特にジャズには激しいプレッシャーで守られ、得意のステップバックしても決まらなくなりました。シーズン中に39%という驚異的なプルアップ3Pを誇っていたのに、ジャズ相手には26%に抑えられてしまいました。
これらは咎められるような数字ではないのですが、それを決めてきたからこそMVPなわけです。
第5戦は完全にクリス・ポールに救われました。それもロケッツが躍進できた理由の1つなので勝ちパターンとしては良いのですが、接戦になるほど重要になっていくハーデンのアイソレーション。
ジャズはボールを奪いに来るようなアグレッシブディフェンスでハーデンのリズムを狂わせました。アグレッシブには守ってこないウォーリアーズは、その分ドライブを警戒してきます。だからこそ、しっかりとプルアップ3Pを決めないと苦しくなります。
調子を上げたデュラントに比べると不安なハーデン
ジャズとのシリーズでハーデンの3Pは29%
第5戦の8/10を除くと3P29%のクリス・ポール2人合計で第1戦に何本の3Pを決めるのか。
なお、ジャズ戦もウルブズ戦も平均5.6本
— whynot! (@whynot_jp) May 11, 2018
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ハーデンの問題はディフェンス面にもあります。
ファーストラウンドの印象と違い、ジャズ戦ではいくらなんでも棒立ち過ぎたハーデン。特に前半。かつての姿に戻ったような守り方で大きな穴になっていました。イングルスがスピードで勝負してくるくらいです。
比較的インサイドのポストを守るのは得意なので困ったらグリーンについてくるのでしょうが、そこを狙ってカリーとトンプソンがオフボールムーブしてくるとかなり怪しくなります。単に手を抜いていたのか、手を抜かなければいけない事情があったのか。気になるハーデン。
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そんなわけで試合を観ていた印象だとウォーリアーズの方が状態が良く、ロケッツは苦しい部分を垣間見せました。それは主にエースの差です。お互いに良いディフェンダーを抱えるからこそ、差異になってきそうな高確率でねじ込んでしまう2人の好不調。
共にディフェンス力で勝ってきたチームなので、無理矢理ねじ曲げてしまうような存在が働いた方が有利になります。
ロケッツの方が勝つと思っていたプレーオフ前から、ウォーリアーズの方が勝ちそうな現状になっているのでした。
そうですよね、プレーオフに入ってからのデュラントがスゴいですよね。あとハーデンがあんまり調子が良くないのが気になります。少なくともホームで2勝しないとやられてしまう気がします。果たしてアンダーソンはどのように起用されるのか。メディアによっても予想が違ってて楽しみな1戦です。お願いだからロケッツ勝って!!!!
両チーム共にアウェイを苦にしないので、そこも見所ですね。
一応ハーデンを擁護しておくと、どうやら体調不良だったそうです。
まあファンとしてはそれでもシュートを決めてほしいところではありますが。
なるほど。でもここにきての体調不良も苦しいですね。健康第一。
最早願望ですがロケッツに勝ってほしい!
というかもうキャブスとウォリアーズはファイナルで見飽きたと言いたい!