ジャズの凄さは触れにくいので、一気に書いてみよう。
サンダーとの第2戦は非常に面白い戦いでした。おそらくファーストラウンドで最高峰の戦いです。ウエストブルックまでゲームコントロールしてしまう試合を、ドノバン・ミッチェルが破壊するという戦略と個人の能力がおり混ざる予想のつかない内容でした。
ゲームレポートを書くとサンダーの事ばかりになります。これはちょっとした悩みでジャズを書くのは難しいのです。それを第2戦のレポートでは「1ポゼッションではなく、流れでみた時に完璧なオフェンス」「フェイバーズ賢い」なんて事を書いています。コメントで3つの意見をいただきました。
「ジャズはミッチェル以外、印象に残るほどのプレーはないものの、着実に点を取っていて勝ち切った感じがチームがしっかりしているなという印象でした」
「ルビオのゲームメイク力は改めて凄いなと思いました」
「フェイバーズは過小評価されている選手だと思ってましたが、管理人さんは高く評価してくれてるのでうれしい」
そんな意見も含めて第2戦を題材にジャズを少し解体してみましょう。
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◉ドノバン・ミッチェルの凄い部分
そんなことは逐一語らないのですが、一番凄いのは「エースである」という事です。それも現代的なエースではなく、「最後に勝負を決めるエース」というちょっと古いタイプのエースです。試合を展開していく中で最後に決めるのがドノバン・ミッチェルです。
そう書いていくと個人の凄さが立ち並ぶ形になりますが、そもそも「最後に決める」というのが、チームとしてそのための準備を進めていく結果だったりします。だから今回は逆引きで試合終盤から戻っていきましょう。
①最後はミッチェル
残り8:22でミッチェルが出てきます。プレーオフということで普段より早い登場です。年齢を考えると良いことではないのですが、違いを作れるのが1人だけなので致し方ないのかもしれません。
〇残り8:22からのミッチェル/チーム
得点8/17
FG7/12
シュートの殆どをミッチェルが打ちます。ただしゴベールがオフェンスリバウンド1本とファールゲームを含めて6本のフリースローを打っています。他は主にルビオの3Pです。
この時間はほぼトップや45°から仕掛けますが、その特徴はペイント内のスペースを大きく開けていることです。そしてルビオとイングルスはコーナー中心に構えスペーシングすると共に、ゴベールではなくフェイバーズが主にピック役になります。ゴベールはエンドライン際でブラインドになる待ち方です。
広いスペースをミッチェルに与え、機動力とスキルのあるフェイバーズが助けるとともにカーメロを狙う。そしてヘルプが増えたら裏のゴベールの高さを使う。
これがミッチェルを最大限に活かすためのジャズのファイナルシステムです。
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②オープンサイドを作る
この試合ではミッチェルの休み時間は少ないのですが、最後に出てくる直前はクラウダーとジェレブコ、オニールあたりが起用されインサイドはフェイバーズ1人になります。この試合は短かったので交代自体は前後しています。
つまりこのときのジャズは「インサイドが1枚で機動力があり、アウトサイドから狙っていくスモールラインナップ」になっています。クラウダーとジェレブコの2人はFGの半分が3Pという典型的な3&Dとして起用されています。そしてコーナー3Pが得意。
最後に真ん中のスペースをミッチェルに使わせる前段階として、大きくスペースを広げられる選手を多く起用するわけです。
同時にサイドから構成するオフェンスが増え、スクリーンも使うのでオフボールの意識を高めています。これもミッチェルがフリーになるために重要な要素だったりします。
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③3Q終盤から4Q初め
この前の時間にもミッチェルは出ています。今はエクザムがいるのでSG役ですが、この時間はPG的なポジションでボールプッシュから自分でドライブしていくことが多くなります。このときはイングルスが同時に出ており、ジェレブコやクラウダーと共にさらに広くスペーシングされています。
ゲームラストがルビオのゲームメイクからミッチェルなのに対し、ほぼミッチェルにお任せなのでスペーシング役が増えています。減ったのはゴベールなのでディフェンスからするとヘルプの距離が遠くなりキックアウトの危険性が高まります。
この次の時間が3P作戦なのでその前にディフェンスにヘルプの意識を高めさせています。
結果としてサンダーの対応はミッチェルにやられたわけですが、ここはやられないくらい寄っていくと3Pが増えていくわけです。まぁ個人で抜くのがおかしいのだけど。
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④3Qのメイン
この2試合でいえば3Qにミッチェルの次に得点が多いのはフェイバーズ、イングルス、ルビオの順です。ルビオはアテンプトが多いものの外しています。3Qはゴベールも長く出ているので多いパターンとしてはルビオやイングルスのプレーメイクからゴベールを絡ませてのフィニッシュです。
〇第2戦のボールタッチ数
ルビオ 99
フェイバーズ 72
ミッチェル 67
非常に多くボールに触ったフェイバーズは3Qに多く得点していますし、ポール・ジョージに抑えられまくっているイングルスもまた3Qに得点しています。
つまり後半開始からのジャズはルビオとゴベールをメインにしながら、イングルスとフェイバーズが得点を多くあげているバランスアタックをしています。
動き回るルビオとフェイバーズを中心にバランスアタックし、その後のミッチェルにお任せパターンに繋げているので、やはりディフェンスの対応を大きく変えさせることを狙っています。
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こんな感じでジャズのオフェンスは線でみていくと非常に興味深いものがあります。
・全員が動いてパッシングしてバランスアタック
→ミッチェル突破力依存とキックアウト待ち
→3Pシューター増やして全員が動いて外から狙う
→センターラインを空けてミッチェル
オフェンスの要素を「メインで攻める選手」と「スペーシング」に大きく2つに分けてしまえば、特に後者のスペーシングに順序だったものがあります。全体が動くパターンから止まって個人突破し、再び全員かつ3P中心で動いていき、最後はスペーシングとミッチェルに変化します。
めんどくさくなったので前半は少し違う観点になっていきます。ミッチェル依存パターンを使うときもあるのですが、前半では殆ど出てきません。
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前半のジャズは基本的にはバランスアタックですが、細かい部分の崩しが入ります。ここからはイメージの話です。
まずインサイドを2人使っているジャズはアウトサイドが空きやすくなりますので、イングルスを活用したがります。ゴベールのスクリーンを使ってイングルスパターンが多いゲームスタートです。ただし、これはサンダーには潰されています。
そのためルビオのシュートが増えます。これをウエストブルックが止めればなんてことないのですが、そんな簡単な話ではありません。なお、ウエストブルックの努力が足りないのは事実。ミッチェルのことは止めていたし。
ルビオは少なくなってきたタイプのPGでドリブルでコートの中を動き回ります。元々はそんなにシュートはしないよね。その動き回るパスの発射台に対して動き回るイングルスを抑えていくのは結構難しい。合わせるジャズの方はもっと難しいけど。だからサンダーはルビオをチームとして警戒することは半分諦めています。そもそもルビオ&ゴベール相手にウエストブルック&アダムスなら勝っているからです。
だからこの戦いは本来はジャズコンビが勝たないとオフェンスで優位には立てません。実際に立っていないけど、それをハードディフェンスからの速攻で誤魔化しています。これは本題とは外れますが、前半のジャズのオフェンスはかなり怪しいよ。ルビオ次第です。
話を戻すとイングルスのアウトサイドが活用できてくると、当然ゴベールが活躍するスペースが出来てきます。そこにルビオやイングルスのドライブで使っていくわけです。繰り返しますがこのシリーズではそれは封じられています。ポール・ジョージ!
この部分もしっかり線が出来ているのがジャズの構成です。大前提はイングルスが決めまくることだし、ゴベールが高さでフィニッシュ出来ることですよ。どちらも一芸さんって感じです。
そんな意味では動き回るルビオを使ってバランスをとるのが難しいジャズ。登場するのがフェイバーズです。PFだけど時にコーナーで3P打つし、気がついたらインサイドに合わせています。つまりジャズで最もルビオに合わせてスペースを調整しているのがフェイバーズ!
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◉フェイバーズを語ろう
シーズン中はゴベールの代役にウド-を起用することも多いのですが、プレーオフモードなのでフェイバーズで賄っています。試合中に様々な顔を使い分けているフェイバーズ。前述の通りボールタッチ数も非常に多い。
そもそも高さがあるけど強さは微妙で、機動力とスキルに乏しいゴベールに比べ、フェイバーズの特徴は高さにパワーと機動力、そしてスキルを使いますがどれも一級品ではありません。それこそ一芸には乏しい選手です。その分、タイミングと判断力で勝負しています。
今回の話で出てくるジャズの特徴に合わせていきましょう。
・ルビオのゲームメイクにフロアバランスをとる
・3Pからオフェンスリバウンドまで対応
・スペーシングする3Pシューターが多いときに機動力センター
・最後のミッチェルパターンでピック役
などなど、実は一芸さんの多くいるジャズの中ですさまじくバランスをとりながら、複数の役割を任せられています。
だから言いたくなるわけです。フェイバーズ便利すぎる。
試しにフェイバーズを追いかけてみましょう。
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今回はドノバン・ミッチェル中心にみてきましたが、実際にはその逆もあるわけで、オフボールムーブの3Pシューター達を活かすために個人技アタックさせているという考え方もあります。いずれにしても、個人個人がより活きるための試合を通した設計がなされているのがジャズのオフェンスです。
しかし、例えば3Pシューター達で広げているときにインサイドにいるフェイバーズが止められたらどうなるでしょうか?
当然チームとしての威力は下がるわけです。そこにいるのがゴベールでない理由は、広いスペースを与えられたときにフェイバーズならば何とかしてくれるからでもあります。
ミッチェルほどの負荷はありませんが、ルビオとフェイバーズは実は自分達が活躍しないとチームが機能不全になるリスクを抱えています。まぁ活躍しなければ次のパターンへ移行されてしまうだけですが。
本来はヘイワードとならんでエースになるはずだったフェイバーズ。気がついたらゴベールがメインとされ、さらにはドノバン・ミッチェルというエースが生まれてしまいました。そんな中でも複数の役割をこなしながら、重要な仕事をこなしています。
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◉ジャズが機能するとき
シーズン後半戦はロケッツに次いで強かったジャズ。今季の特徴は大量得点差で勝つことです。それが起こる理由のひとつが全てが上手く回ったときに手がつけられないからです。でも、サンダーみたいなチームが「全てが上手くいったとき」といわれれば理解出来ますが、ジャズの場合はそこまで上手くいく武器があるわけではありません。それを試合を通してみれば非常によくわかるわけです。
・試合開始後はゴベールのスクリーンを使ってイングルスに決めさせる
・空いてくるスペースでルビオのドライブとゴベールの高さを使う
・マークが分散した所でミッチェルが単独勝負する
・ミッチェルに寄ってくるのでキックアウト3Pを使う
・3Pで広げたのでフェイバーズが広いインサイドで決める
・インサイドに収縮するので3Pシューター達を使う
・スペースが広くなるのでミッチェル勝負で勝つ
なんとなくこんな感じで推移していくストーリー仕立てのジャズオフェンス
冒頭に戻ると
「ジャズはミッチェル以外、印象に残るほどのプレーはないものの、着実に点を取っていて勝ち切った感じがチームがしっかりしているなという印象でした」
何が凄いか理解しにくいけど、流れるような論理的構成をしているのがジャズのオフェンスです。
でも、結局最後は『ドノバン・ミッチェルが個人勝負を制することが出来るのか』という部分で勝負を決めるわけです。
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だけど、そんなジャズに対してサンダーはしっかりと対応している事がわかります。そもそもイングルスにやらせず、ゴベールを止めます。しかし、その次の手段であるフェイバーズに決められ、ルビオに3Pを決められてもいます。こんな部分が戦略的な戦いだったりします。
サンダーによるジャズへの対策と、そんなサンダーの対策へのジャズの工夫。それが最終的に煮詰まってくると個人の勝負が始まるわけです。それに勝った方が制しているのがこの2試合でした。
第2戦の終盤にウエストブルックはコントロールモードでしたが、非常に冷静で的確な選択をしました。インサイドを封じられている状態でもスピード差のあるグラントのドライブが決まり、その後でアウトサイドから打たせます。しかし、決められなかった個人の戦いです。
サンダーvsジャズで行われている駆け引きと個人の勝負!
ファーストラウンド最高峰の戦いです!面白いよ!
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◉あとがき
フェイバーズってカール・マローンの流れをくんでいる感じ満載ですよね。
ストックトン息子が契約したとき、ストックトン&マローンの動画をみていたのですが、マローンって現代にいたら大活躍しそうです。こういう選手は非常に珍しいのですが、あの時代よりも現代の方が合っていそうなタイプ。
パワーがあり、走れて、合わせるのが上手く、シュート力があり、インサイドでも無双する。
重要なのは1人でインサイドを担当できること。つまりスモールラインナップでも活躍できるわけです。
そんなカール・マローンについて書いてみたい気もしてきました。
ウエストブルックって、短所としては激情家でミスが多いみたいな印象でしたが、そのウエストブルックが冷静に的確な判断をするなんて恐ろしいのでは、、?
試合観てないしバスケそのものはあまりくわしくないですが、何となく思いました。
でもウエストブルックの恐ろしさがそれで減ってしまう部分もあるので難しい所です。ただ、自分のシュートが決まらない中で違う選択肢をしっかり選んだのは非常に良かったかと思います。
いつも細かい分析ありがとうございます。
エクサムの復帰がチームにもたらしたものはかなり大きいと感じています。
来期、チームがさらにステップアップするためにどんな選手がジャズには求められるとお考えですか?
エクサムだとネトよりスピード感が出ましたね。ディフェンスからの速攻パターンが強くなりました。
だから速さについてくるタイプが欲しそうです。ジャパリ・パーカーなら熱いですね。
来季はとりあえずミッチェルのプレータイム減らすのが1番ですね。若手酷使でケガは最近多すぎます。後半戦からミッチェルが上げてくれば。
カールマローンの記事を熱望します
どんな中身にすれば良いのですかね?
そこから既に悩みます。
あの頃に置いて何が優れているのか(データ的に)
現在に置いてどのような活躍ができるのか
とかとかです
なにとぞ!!
あーあと
現在のどんなPGが相性がいいかとかー
あー
わくわくしますなあ
ほんとにいつもありがとうございます!
いつも楽しく読ませて頂いています!ストックトン&マローンの時代からジャズ一筋の私としてはマローンの特集が凄く楽しみです。
例えば今の戦術ではどのチームとマッチするのか?PFエースのチームは優勝しづらいのか?など教えて欲しいです。ダンカンはいますがジョーダンの後はオラジュワン、シャック、コービーなどPFをエースに据えるところは優勝出来ていない印象です。エース論みたいなものも聞いてみたいです。
ジャズ、サンダー戦は去年に引き続き最終戦までもつれそうな気がしています。また是非レポートをお願いします!
エースではないですけど、ヒートは優勝していますし、ノビツキーも優勝していますね。どちらも特徴あるPF起用なので昔のタイプは苦しいとは思います。
サンダーとジャズは面白いので、ここから一方的にならない事を祈ります。怪しいのはサンダーの方ですけどね。
マローン評価は是非お願いします。レイカーズに行かなければ私的にはもっと評価が高かったのですが。ストックトンとのピックではなく、現代にいたら、どのチームでどんな戦略の中でどんな役割であれば一番活きるのか。楽しみにしてます。