20180305 キングス vs ニックス

今季終了しているけど、ムダに過ごすわけではない両チーム。キングスは負けて良い状況ですが、あまりそんな雰囲気を出さないのは偉い。でも勝てない。

ニックスはプレーオフはムリです。それで、まぁどうしようか?



◉最近のキングス

ボグダノビッチがライジングスターでMVPをとりました。シーズン前半は酷評していてディバッツの見えない力にプレータイムを伸ばしているだけでした。しかし、今は立派なプレーをします。

それは単に他の選手よりもプレー機会を与えられたからこそでもあり、その分プレー機会を減らされた周囲の選手に同情もするわけです。なお、ボグダノビッチは25歳でニックスのカンターと同じ年齢という事は忘れてはいけません。

ネッツ戦ではビンス・カーターとランドルフを休ませたけど、コーリーステインやラビジエリが活躍して勝っているので、そんな部分を伸ばすべきだと思いますが、コーリーステインは離脱しています。この試合ではランドルフはお休み。

要はフォックスとボグダノビッチ以外はまだまだ未来へどうして行くかは未定みたいな。



◉最近のニックス

ジャレット・ジャックがバイアウトを希望したとか。もうプレーオフには間に合わなくなりました。ポルジンギスがいてプレーオフ狙えた時はジャックで良かったけど、プレーオフがムリになった中ではジャックおじさんは不要なのも事実です。しかし、伸ばすべき若手がいないという悩みもあります。

ムディエイを獲得したので少しは若手が増えましたが、ムディエイがそんなに使える選手ならば苦労しないわけです。ニリキナと合わせてガマンして学ばせるのが重要ですが、それよりもトレイ・バーグの方が活躍してしまう事実も。

ここは何が良いのか判断別れる部分なので、3人にプレータイムがあるのだからホーナセックの判断を信じるしかありません。

ここ最近は1勝12敗。マジックに勝っただけです。これはポルジンギス不在というだけでは許されない勝率であり、ポルジンギスがいてもプレーオフ争いは難しかったでしょう。

シーズン前半と違うのはチームの伸び代だと思っています。ちょっと完成され過ぎていたニックス。それは悪い意味ではないけれど、他のチームがシステムだったりケガ人だったりに苦労して行く中で、全てがスムーズだったニックスは変化に乏しくなりました。

それはスターターとベンチの選手構成が同じという部分にも現れています。

ポルジンギスがいない中で新しい形を模索していかないと、来季への不安は残ります。



 

 

◉違いを生み出すもの

キングスは毎回オールドスクールな内容を見せられて、しかもそこには必ずベテランがいて、最終的に走られて負けるのでウンザリしています。

ところがこの試合では全く違い、フォックスとボグダノビッチを中心にドライブと合わせを駆使して得点していきます。誰かに何か言われたのか?
そこにラビジエリのミドルやジャスティン・ジャクソンが3Pやオフェンスリバウンドと万能性を出して行くので期待の持てるキングス

しかし、それは機能性もあるけどニックスとしても何となく読みやすいので、それなりには止めます。それなりにね。

試合に勝つためには時には戦術を無視してでも決めきるようなプレーも必要です。それは1つには連続得点だし、ディフェンスからの速攻だし、突然の3Pだったりします。

そんなプレーをしていくのが、ベンチから出てくるヒールドとフランク・メイソンでした。メイソンは強引なドライブをしますが、この試合では確率はそこそこ。ヒールドが1人で3Pにスティールからの速攻を決めてキングスがリードを得ます。

それはイェーガーHCは嫌がりそうな内容でした。ハーフコートでの組み立てよりも、早い展開の中でディフェンス体型が整う前のドライブであり3Pです。個人の状況判断での得点です。それをスターターにしてもらえない選手がやるという。

前半終盤にはボグダノビッチも同じようにロング3Pを決めました。ランドルフとコーリーステインの不在もあり、いつもよりも早いペースでの得点をしていくキングス。そしてベンチ前に立ち続けるシーンが少ないイェーガーHC。

キングス内部の変化を感じずにはいられない前半でした。



◉ニックスの異質物

ニックスは戦術カンター。違いを生み出すものの1つにオフェンスリバウンドがあります。ニックスの場合は設計に含まれてしまっていますが、外れたシュートを押し込んでくれるのは貴重な存在です。

◯エネス・カンター
14点 16リバウンド

16のうち8がオフェンスリバウンドだったカンター。それはそれは頼りになります。連続で奪った時にニックスはキングスを上回りました。

しかし、それ以外に相手を上回る要素が少ないニックスです。他にあるのはニリキナのディフェンス力くらい。

その意味はやるべき事をしっかりやっているという事であり、キングスが予想出来る内容しか行われていないという事。ニックスらし過ぎるニックス。

そんな中で異質物がいます。それはヒックスとトロイ・ウイリアムス。彼らは下部リーグあがりで5試合くらいしか出番のない新米なので、チームの約束事を守りながらも自分をアピールする必要があります。

例えばコーナーでニリキナとヒックスがピック&ロールで決めるシーンがありましたが、ニックスがやらないプレーを混ぜてきた事で良い形になりました。

この辺がニックスの打開ポイントになります。ニックスらし過ぎる事がマイナスになり、異質物がアクセントになる。それも勝つためには重要な事です。ホーナセックに足りない部分を出してくれた2人。

確率が高ければもっと重要になれるよ。



◉大人しすぎる両チーム

そんな意味ではどちらも大人しすぎるチームです。プレーオフ狙うチームには重要な要素ですが、未来を考えるならば時には新しい発見も必要だと思うのです。そればかり求めすぎで勝てないサンズみたいなチームもありましたが。

だからシーズン前半に勝っていたニックスがそんな路線に踏み切り難いのは理解できます。キングスはそれをやると起用されなかったのが、受け入れられるようになっているのか?

それにしてもニックスはマグダーモッドがいなくなって3Pが更に酷くなりました。正直、キングスは守れているとは言い難く、頻繁にフリーになるのですが、打たずにドライブしたり打っても外したり。この辺は意識的に多投していかないと確率も上がりません。

あっでも、ハーダウェイは多投するけど確率は上がらないか。

キングスは3P6/12とそこだけで違いを生み出しました。ニックスは0/9です。



◉自由を許可しているようなキングス

後半になりキングスの自由な感じが加速します。フォックスのプルアップ3P、ジャスティン・ジャクソンがペイント外からフローターと加速して点差を18点まで広げます。

なんていうか「こんなキングスが観たかった」という状態に入ります。あとはフォックスの速さを全面に出して欲しいですが、それは戦術問題なので難しそうです。

それはやはりベンチメンバーになると加速します。おそらくいろんな事を気にするのを辞めたヒールドは個人技でミドルを打っていくし、フランク・メイソンと2人でチャンスだと思えばディフェンスプレッシャーを強め、マークを捨ててスティールを狙います。

元々がシステム徹底なチームなのでフロアバランスをとる意識はあり、パスも繋ぐけど個人技で得点していくケースが増えてきます。ビンス・カーターもクイックで3Pを決めていき、オフェンスが継続していきます。

ちなみにカーターに関しては以前から周囲とは違うタイミングで打っていました。それは立場的にも戦術理解としてもイェーガーに許されている部分です。

その意味では他の選手もイェーガーを理解してきたとも言えます。システム徹底なんだけど、個人の判断でやっても良いよ。そんな感じかな。

一方でノリノリになってきて、スティールから速攻を出した時に、パスを読まれてバークに逆にスティールから速攻を許すと、それまで座っていたのに立ち上がって何かを叫んでいるイェーガー。

だからやっぱり個人が自由に攻めて、ミスも出やすいこの感じは嫌いなんだと思います。



◉アイバーソンを意識するバーク

ニックスは序盤こそコートニー・リーとハーダウェイの連続3Pが出ますが、次第に停滞していきます。それでも苦しい中でリバウンドを押し込んだりと抵抗します。

活路を見出すのはアイバーソンみたいなバーク。小さいけれどクイックネスで勝負し、強気なシュートを決めていきます。ニックスに慣れてきたのか、しっかりとアシストも出来るようになっていて、そのプレーは希望があります。

◯トレイ・バーク
11点 6アシスト
FG5/10

しかし、バークに関しては表面だけの評価をするのは危険です。それを示すのはニリキナのスタッツです。

◯フランク・ニリキナ
前半 4点 5アシスト
後半 3点 0アシスト

プレータイムが短くなったとは言え、後半は何もしていないニリキナ。前半は素晴らしい出来でした。

バークはちゃんとパスをするようになったものの、どうしてもボールを独占してしまいます。それはアイバーソンクラスならば成り立つのですが、バークだとどうしても全体のリズムを乱すように。

ある意味それくらい独占して欲しいフォックスなんですけど。

バークが悪いとは全く思いません。それはバークの良さだし、サイズの小さい選手が生き残るには重要です。だからこそゲームメイク自体はニリキナにやらせるとか、プレータイムを限定するとかHCには工夫が必要です。

バークが活躍すればするほど、チームとしてはリズムが生まれない状況になっていきました。もっとよく動くチームだったのですが、ボールウォッチャーになって運動量も足りなくなっている気がします。



◉足を引っ張るランドルフ 笑

しかし、試合は残り6分からニックスが点差を一気に縮めていきます。その要因はキングスオフェンスの停滞です。残り6分半で95点だったキングスは残り1分でも97点と急激にストップしました。

ニックスがそこまでFG11/18なので賞賛するほど良かったわけではありません。キングスが悪く、ニックスが少し良かったくらい。

キングスは単なるシュートミスとセットオフェンスの効率性の悪さです。フォックスやボグダノビッチのドライブを使いますが、この場面で決まらなくなりました。

この良し悪しも難しいです。キングスに限らず若いチームによくある話の1つに過ぎないです。いちいち苦言を呈しても仕方ない。経験積むしかないよね。

そんなわけで残り30秒で97-97の同点になります。まさかのチャンスが訪れたニックス。

キングスの選択はボグダノビッチ勝負で、足を滑らせたリーを置いてミドルを決めます。ニックスのオフェンスはゴール下のオクインに渡りフリースローを2本決めて同点。

再びのキングスの選択はフォックスなのですが、スローインのボグダノビッチはフォックスをパスをせず、空いたラビジエリに渡し、リターンを受けにいきます。
しかし、ラビジエリはボグダノビッチに渡さず3Pを選択し、これが見事に決まります。

喜ぶラビジエリはベンチから飛び出してきたランドルフと身体をぶつけて喜びます。
インプレー中なのにベンチから飛び出してきたランドルフにテクニカルファールがコールされます。

このフリースローを珍しくリーが外し、ハーフコートショットも外れてキングスが勝利しました。

危なかったぞランドルフ



この最後の攻防の気になる点がいくつかありました。1つ目はラビジエリの選択。これがイェーガーの指示とは違うように思います。つまりラストも個人の判断だったという事。

ボグダノビッチは自分で打ちたくてフォックスにパスしなかった気もしますが、そんなボグダノビッチを無視したラビジエリ。

2つ目はニックスの選択。ディフェンスだけの場面でバークを使い続けた事。それはさすがにニリキナを使うべきだったはず。その前のオフェンスも最終的にはビーズリーのドライブになったけどバークのピックから。そこは3Pも決めていたハーダウェイじゃないのか?

3つ目はニックスのハーフコートショットに対するキングスのディフェンス。基本的に打たせるチョイスでロングパスだけは絶対避けたい守り方でした。

これは個人的には賢い選択だと考えています。しかし、最近でもいくつかのチームが全てのショットにプレッシャーかけようとしてロングパスをやられました。1番良い例はレブロンに決められたウルブズのディフェンス。

そんな気になる点でした。



◉キングスに魅力があった理由は何か?

全体をフォックス仕様のスピードにしてもらえると嬉しいのですが、そこまでいくと単なる個人の好みですが、今シーズン観た中で最も魅力のあったキングス。

キングスは月1回くらいしかみない時もあるので、この試合で急に変わったわけではないでしょうが、その理由を考えてみます。

まずシステムにガチガチに縛られた様子がなくなりました。それはフォックスが良い子でシステム守り過ぎる部分を差し引いても、目につきます。ヒールドを見るだけならばHC無視にも思えますが、最後のラビジエリまで行くとイェーガーの心変わりか、次のステップに進むために変化させている部分です。

グリズリーズもコンリーやガソルが全てシステム通りにしていたわけではないので、理解が進んだ中で自由を取り入れ始めたと好意的に捉えて良いと思います。

ただし、ヒールド、フランク・メイソン、ラビジエリ、ジャスティン・ジャクソンとこれまでプレータイムに恵まれていなかった選手が自由にやり始めたので、内部崩壊の可能性も否定できません。



キングスの変化を懐疑的に解釈すると、ランドルフとコーリーステインの不在がもたらしたものと捉えることも出来ます。

この試合ではスターターこそクーファスとラビジエリを並べましたが、2人を交代で使うローテーションでした。インサイドが人数不足のため1人で対応する形です。

そこで解き放たれたようにドライブし、ディフェンスが収縮するからキックアウトも出来ました。普段ならば2人のインサイドにより、ポストにボールを渡すしかなくなります。

真偽はさておき、この形ではディフェンスでミスマッチが発生します。しかし、そんな場合でも気にしないで守るのが今の主流です。代表格はラプターズとセルティックス。

速さが高さを駆逐するのは、より早いヘルプとローテーションが可能になるからです。奇しくも3Pを打てないニックス相手ならばなおさら間に合います。

オフェンスリバウンドを15取られましたが、8本奪ったカンターを22分しか起用してこなかったので助かりました。オクインが良かったとはいえ、カンター使えばもっと楽だったかもよ。

要は未来を向くチームならば、こんな形でも守らなければならないと言うことです。

よく分からないけど、この内容ならばまた観る価値があるキングスでした。ランドルフがいない試合だけ観ようかな。



◉ムディエイとニリキナ

ニックスには未来を見据える人材がムディエイとニリキナくらいしかいません。そこに前述のトロイ・ウイリアムスやヒックスが加わって欲しい所です。

バークについては個人としては良いけど、チームとしてそれで良いのかという疑問があります。ホーナセック次第の部分。そこは置いときましょう。

この試合ではムディエイもニリキナも好印象でした。

◯エマニエル・ムディエイ
0点 3アシスト

◯フランク・ニリキナ
7点 5アシスト

しかしスタッツをみればガッカリな2人です。プレータイムもありますが、とにかくシュートが決まらない。それは課題だし、勝つために2人を使わないのは理解できます。でも、起用してあげることで解決しやすいのもシュートだし。

ムディエイは無謀な突破とタフショットとターンオーバーが問題なわけですが、そんなシーンは全くなく、むしろフリーになったのに外しただけで良いシュートセレクトをしました。ニックスのシステムに合わせてきており、ナゲッツの終盤でも感じたチームプレーヤーとして成長しようとする心構えがみられました。

ニリキナはこれまではパス回しばかりだったのが、自らドライブを増やし、それをアシストに変えました。周囲に委ねる形から自分がプレーメイクする意識の高まりです。ジャレット・ジャック式からの脱皮です。ディフェンスも出来る選手だし。

勝てそうだった試合展開の中で2人を使わなかったのは理解できる反面、こんなプレーをみせている21歳と19歳はニックスにとっては経験を与える重要な時間ではないのでしょうか。

これまで選手を育ててこれなかったニックス。やっと手に入れたポルジンギスですが1人で何でも出来るわけではないのは今シーズンで証明されています。

ムディエイとニリキナに固執する必要はまったくありませんが、でも他に有望株がいるわけでもないし、シーズン残り試合を考えたら2人にアグレッシブにプレーさせるのは大切です。それってキングスみたいになのかな。



あまり期待していなかった試合ですが、両者の良い部分も悪い部分も感じれて興味深い試合になりました。こんなにキングスを肯定的に書いたのは初めてではないだろうか。

どちらもシステムがあるけど、そこから逸脱出来るかどうかが重要で、より逸脱したキングスが勝ったと捉えています。

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